シグマ DP0 クアトロ でブツ撮りはできるか?18センチの接写の威力は?2021/1/23

モンスターという大袈裟な言葉を冠しても構わないと思う。

化け物じみた描写力を誇るシグマのFoveonセンサーに、14ミリという、フィルムカメラなら21ミリに当たる超広角レンズのみを直付けでマウントしたSIGMA DP0 Quattro。

もちろん、ズーム機能など、電子的にも光学的にも全くなく、あくまで14ミリ一本の単焦点レンズ。

しかも、ゼロディストーション。

超広角レンズなのに周辺部が全然、歪曲しない。つまり広角レンズ特有の周辺部の曲がりがない、独自設計レンズ。

多分、後にも先にも、こんなカメラは出て来ないだろうと思う。

シグマという会社が、レンズでも、センサーでも、独自技術を持っていたが故に、極端に突き詰めたコンセプトでも、製品化できてしまったという、あえて、奇跡的な、と言っていいカメラだと思う。

しかし、その突き詰めっぷり故に、外観は本当にモンスターじみたものになってしまった。

目次

ビューファインダーを取付けたSIGMA DP-0のシルエット

シグマdp−0クアトロ

ゼロディストーションを実現するための8群11枚というレンズ構成は、まるで望遠レンズのような長玉になり、ピントを正確に合わせるためにディスプレイに後付けできるビューファインダーを付ければ、昔の大判カメラ撮影時に使う暗幕(冠布というらしい)をかぶったような姿になる。

さて、その超広角、ゼロディストーションを活かした作例は、ネット上にあまた見受けられるのであるが、 私が気になったのは、こいつの最短焦点距離が18センチである点だ。

これならば、かなりな接写ができるのではないか?

と、気になりすぎた私はとうとうシグマDP0クアトロを買ってしまった。

シグマdp−0クアトロビューファインダー付き

やっぱりビューファインダー付きがいい。

変な形と言われるが、なんか納得する形。

14mm ウルトラワイド。f値はF4と暗めだが、これは「ディストーション率0.5%以下」のための攻防の結果であったと、シグマの開発インサイドストーリーにあった。

シグマdp−0クアトロビューファインダー付き

ビューファインダーは、あらかじめマウント部をコインネジで取り付けておけば、簡単にスライドして取り外せる。

ディオプター、視度調節ダイヤルがついているので、目の悪い人でも、裸眼でファインダーを覗くことができる。
しかし、私は近眼も老眼もひどく、このレベルでは補正できなかった。残念。

キャップはアルミ製のしっかりしたもの。
「キャップを外して放置するな。太陽光を覗くな。」等の注意書きが英語で書いてある。

撮影開始!

さて、それでは早速接写をしてみる!

最短撮影距離の18センチギリギリまで寄ってみる!

シグマdp−0クアトロ接写

ボディにある、フィルムマークから、18センチなので、かなり近い。被写体にほとんどレンズがくっつく距離。

で、こんな感じで。葉っぱの質感がすごい。

シグマdp−0クアトロ接写

早くも咲き出した水仙を撮ってみる。
風が強かったので、シャッタースピードを早くせねばならず、絞り込めなかったが、後ろの梅の木の木肌をキッチリ描写できた。

廃棄ルツボ。
耐火物らしい、ゴツゴツして、ポーラス(吸湿的)な質感が出ている。

車のヘッドライトを超接写で撮る。
こうゆうメタリックなものは大得意なようだ。

シグマの現像ソフトにあるFull Lightとは。

ちなみにシグマの現像ソフトには、「Full Ligft」という、調節項目があり、「画面の明るい部分の露出を変えることなく、暗い部分にライトを追加するように明るさを調節する」ことができ、これをいじると、このように黒いボディの映り込みまであぶり出せる。

私のワインコップを撮ってみたが、残念ながら周囲の余計なものが映り込み、トリミング処理をした。それでも台の木肌がしっかり写っている。

超広角を試すため、工房の壁を撮ってみる。

葉っぱの落ちた蔦のつるが気持ち悪いくらいに写ってしまった。

よし!ちょっと広いところに行って撮ってみよう!

と、河川敷に来てみた。

夕暮れ時の河川敷

堤防の上をジョギングしている人がいる。肉眼ではすぐわかったのだが、この画像だとわかりにくいので、拡大してみる。

二人いて、一人は夕日を眺めてるのかな?

夕暮れ時の川面を撮ってみる。

このようななんて事もない一枚に、このカメラの実力が出るように思う。

川辺に佇んでいた時の風や、空気感がよみがえって来る。

左側の枯れ木のあたりを拡大してみた。

笹の茂り具合や、電柱のガイシなど、細かい部分まで描写されている。

うーん。結論として?

さて、結論として、ブツ撮りは確かにできるが、このカメラの性能をフルに引き出すには、自分はまだまだだ、と感じた。

画面の隅々にまで映り込んでしまうが故、余計なものを整理すべき準備がいるし、描写力がすごいので、高めのシャッタースピードを選び、ブレないよう、そしてピントが甘くならないよう、三脚の使用は必須。

そして、全然歪まないゆえ、超広角なのに、歪まない普通の絵が出てくるので、周辺部をぐわっ!と歪ませて、いかにも「広角だぞ!」というハッタリ?が効かず、結局、「いかに画面を切り取るか?」という、実に基本的実力が常に試される。という恐ろしさ。

いかに超広角であろうと、その場で、自分が見て、捉えて、その見ている自分を包んでいる自然は、360度周りにある訳で、それを切り取って写真にしないといけない。

そんな当たり前の事実に、改めて気付かされる。

望遠レンズだと、余計なものが入らないから、パッと構えただけで、なんかそれなりに撮れるのだが、こいつはそんなに甘くない。という事を思い知らされる結果となった。

モンスターを使いこなすには、やはり、こちらも覚悟が必要なようだ。

タンブラーに大きめのサイズで上げていますので、物好きな人はどうぞ。

ディストーションゼロ シグマDPシリーズ 究極の0

なぜ超広角でこんなに長いレンズになったのか?

SIGMA インサイドストーリー から以下抜粋。

レンズというものの性質上、光を完全にまっすぐにすることは不可能。ではどのぐらいの角度なら良いのか。設計チームがまずやったことは、Foveonセンサーに角度をつけて光を当てた場合の許容値を調べることだった。光の角度を0.1度刻みで変えていき、得られたデータを検証する日々。その結果、鏡胴はボディとのバランスがとれるぎりぎりまで長いものとなった。原理としては物理的な全長を稼ぐことで、レンズの前面から入った光を何枚ものレンズを通過させながらゆっくりと曲げていき、光がレンズの反対側から出る時点で無理なくまっすぐにする仕組みだ。これで満足できる結果を得ることができた。 長い鏡胴は、ディストーションを抑えることにも有利に働いた。鏡胴に余裕があるぶんレンズ設計の自由度が広がり、取り入れたいアイディアをいくつも試すことが出来た。さらに、レンズの材料となる硝材や、加工技術の発達がそれを後押しした。「0」には最終的に8群11枚というレンズ構成が採用されたが、そこにはシグマ独自の特殊低分散ガラスであるFLDガラスが4枚、同じくSLDガラスが2枚、また大口径両面非球面レンズと片面非球面レンズが各1枚ずつ使用されている。「10年前だったら到底不可能だった」と幸野は言う。試行錯誤の連続ではあったが、蓋を開けてみればディストーション率0.5%以下という目標を達成していた。

FOVEONセンサーとは?

FOVEONセンサー開発秘話 SIGMA SEIN より以下抜粋。

「彼は、シリコンの光吸収特性やRGB各波長の分光特性に関する研究を行い、最終的に各ピクセルロケーション内の特定の深度で3つのフォトダイオードによって色を捉える方法を理論的に導き出しました。垂直方向の色分離方式を確立すれば、写真家の高度な要求を満たす色再現が実現できるはずだ、と確信したのです。シリコンの物性に着目した垂直方向の活用をイメージセンサーに応用し、RGBを3層構造(2048×2048ピクセル×3層)でキャプチャする『世界初の3層CMOSイメージセンサー』のテストに漕ぎつけた瞬間は、誰もが緊張と不安でいっぱいだったことを覚えています」

一般のデジタルカメラのセンサー(ベイヤーセンサー)はモノクロームセンサー

一般のデジタルカメラは、「モノクロームセンサー」SIGMA Dp2 カタログより以下抜粋

シグマのSDシリーズ及びDPシリーズ以外の、市場で売られているほぼ全てのデジタルカメラは、基本的にはそれだけでは色を取り込むことができないモノクロームセンサーです。これらのセンサーは色情報を取り込むことができないので、センサー表面にRGBの3原色を規則的に配置したカラーフィルターを配置して、水平方向に色を記録しています。その際、フォトセンシングを行う各フォトダイオードの上には3原色のうちの1色だけのフィルターが配置されるので、1 ピクセルで1色しか取り込むことができず、その他の2つの色情報は切り捨てられてしまいます。 もちろん、このままではオートクローム同様、RGBの粒子がそのまま記録される写真になってしまうので、後段の画像処理工程で「デモザイク」と呼ばれる色の補間処理を行って、各ピクセルが失った色を復元させています。この補間処理は、基本的に隣接するピクセルから失った色を推測で取り込むことによって行われています。

世界で唯一のフルカラーキャプチャシステムFOVEON。ベイヤー式センサーとの決定的違い。

世界で唯一のフルカラーキャプチャシステム。ベイヤー式センサーとの決定的違い。シグマSD-15より以下抜粋

・・・の図にあるような、モザイク状のカラーフィルターアレイを使用している一般的なデジタルカメラでは、前述の「デモザイク」によって、「偽色」と呼ばれる、被写体とは何ら関連のない色が生じることがあります。これは、ある一定以上の細かいもの(高周波成分)を写したときに、RGBのフィルターが規則的に配置された一般的なカラーフィルター(ベイヤー式フィルター)との作用で発生するものです。 この問題を解決するため、ベイヤー式カラーフィルターを採用する一般的なデジタルカメラは、偽色を抑えるために、光学ローパスフィルターと呼ばれる、もう一つのフィルターを、レンズとセンサーの間に配置しています。この光学ローパスフィルターは、撮像レンズで高解像度に結像した像のうち、偽色を発生させる精緻な要素(一定以上の高周波成分)をセンサーの直前でカットする役割を果たすために、偽色の発生は効果的に抑えられますが、その一方では、当然ながら、最終的な画像の解像度を落としてしまうことに繋がっているのです。

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